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こちらの続きです。

例の判決から2週間以上経過したものの韓国政府から具体的な説明も話もなしに日本政府に対する批判のみとなっています。
今回は4人の原告の経緯と裁判官の個人意見を2018.10.30 新日鉄住金事件大法院判決(仮約)から要約しました。

原告4人の経緯

亡訴外人と原告 2の場合
  • 旧日本製鉄が1943 年頃、「大阪製鉄所で 2 年間訓練を受ければ、技術を習得することができ、訓練終了後、韓半島の製鉄所で技術者として就職することができる」という内容の工員募集広告を平壌だしていた。
  • 亡訴外人と原告 2はこれに応募して合格。
  • 大阪製鉄所で 1 日 8 時間の 3 交代制で働き、ひと月に 1、2 回程度外出を許可される待遇だった。
  • 旧日本製鉄は賃金全額を支給すれば浪費する恐れがあるという理由で、ひと月に 2、3 円程度の小遣いだけ支給されるだけで残りを全部同意なしで、彼ら名義の口座に賃金の大部分を入金され、その貯金通帳と印鑑を寄宿舎の舎監に保管させた。
  • 1944 年 2 月頃から訓練工たちを強制的に徴用し、対価の支給がなされなくなった。
  • 1945 年 3 月頃、大阪製鉄所がアメリカの空襲で破壊され、6月頃、咸境道清津(現北朝鮮東部)に建設中の製鉄所に配置され移動した。
  • 1日12時間働かされたが無賃金だった。
  • 通帳と印鑑の返還を求めたがなされなかった。
  • 8月頃、ソ連の攻撃を受け逃げ出し、ソウルに到着したころ終戦を知った。
原告3の場合
  • 1941 年、大田市長の推薦を受け、保局隊として動員され、旧日本製鉄の募集担当官の引率によって日本に渡り、旧日本製鉄の釜石製鉄所でコークスを溶鉱炉に入れ溶鉱炉から鉄が出ればまた窯に入れるなどの労役に従事した。
  • 賃金を貯金してくれるという話を聞いただけで、賃金を全くもらえなかった。
  • 1944 年、徴兵され軍事訓練を終えた後、日本の神戸にある部隊に配置され米軍捕虜監視員として働いていたところ解放になり帰国した。
原告4の場合
  • 1943 年 1 月頃、群山部(今の群山市)の指示を受け募集され、旧日本製鉄の引率者に従って日本に渡り、日本製鉄の八幡製鉄所で各種原料と生産品を運送する線路の信号所に配置され線路を切り替えるポイント操作と列車の脱線防止のためのポイントの汚染物除去などの労役に従事した。
  • 逃走がばれ、約 7 日間ひどく殴打され、食事の提供も受けられなかった。
  • 記原告は労役に従事する間、賃金を全く支給してもらえず、一切の休暇や個人行動を許されなかった。
  • 日本の敗戦後、帰国せよという旧日本製鉄の指示を受け故郷に帰って来るようになった。

まとめると、4人の原告は徴用されたのではなく、募集に応じるか推薦により旧日本製鉄に来た。仕事の待遇は悪く給与をもらえなかったということですかね。
正直これの裏付けが取れているとは思えないのですが、これまでの裁判でこれを認定するだけの証拠は集まっているのでしょうか。推測だけの予感もします。

裁判官の個人意見

裁判官の個人意見は以下の4項目32ページにも及んでます。(全49ページ)

  1. 上告理由第3点に関する判断に対する大法官イ・ギテクの個別意見
  2. 上告理由第 3 点に関する判断についての大法官キム・ソヨン、大法官イ・ドンウォン、大法官ノ・ジョンヒの個別意見
  3. 大法官クォン・スニル、大法官チョ・ジェヨンの反対意見
  4. 大法官キム・ジェヒョン、大法官キム・ソンスの多数意見に対する補充意見

上告理由第3点とは、「請求権協定の対象に損害賠償請求は含まれない。そもそも原告は未支給賃金や補償金を請求しているのではなく、慰謝料請求である。」と結論付けられた部分で、どうしてそういう結論に達したか6ページに渡って請求権協定の解釈を述べていた部分です。
日韓関係に決定的に影響を与える今回の判決の肝といえる部分なのでそうとうページを割いています。

上告理由第3点について
  • 原告らが主張する被告に対する損害賠償請求権は、請求権協定の適用対象に含まれると見ることはできない。
    1. 原告らは被告を相手に未支給賃金や補償金を請求しているのではなく、慰謝料を請求しているのである。政府の韓半島に対する不法な植民支配および侵略戦争の遂行と直結した反人道的な不法行為に該当し、このような不法行為によって原告らが精神的苦痛を受けたことは経験則上明白である。
    2. 請求権協定は日本の不法な植民支配に対する賠償を請求するための取り決めではなく、基本的にサンフランシスコ条約第4条に基づき、韓日両国間の財政的・民事的債権・債務関係を政治的合意によって解決するためのものであったと考えられる。
    3. 請求権協定第1条により日本政府が大韓民国政府に支給した経済協力資金が第2条による権利問題の解決と法的な代価関係があると考えられ得るかも明らかではない。その具体的な名目については何の内容もない
    4. 請求権協定の交渉過程で日本政府は植民支配の不法性を認めないまま、強制動員被害の法的賠償を徹底的に否認し、これに伴い韓日両国の政府は日帝の韓半島支配の性格に関して合意に至ることができなかった。このような状況で強制動員慰謝料請求権が請求権協定の適用対象に含まれたと見るのは難しい
    5. 1961.5.10.第5次韓日会談予備会談の過程は公式見解ではなく、第5次韓日会談自体日本の反発で妥結されなかった。また韓国政府の提示した総額12億2、000万ドルにはとうてい及ばない3億ドルのみを受けとった状況では、強制動員慰謝料請求権も請求権協定の適用対象に含まれていたものとは考えにくい。
上告理由第3点に関する判断に対する大法官イ・ギテクの個別意見
この部分の上告理由の要旨は、原告らが主張する被告に対する損害賠償請求権は請求権協定の適用対象に含まれ、請求権協定に含まれている請求権は国家の外交的保護権のみでなく個人請求権まで完全に消滅したものと見なければならないというものである。
この問題に関して、すでに差戻判決は、「原告らの損害賠償請求権は請求権協定の適用対象に含まれなくておらず、含まれるとしても、その個人請求権自体は請求権協定だけでは当然消滅せず、ただ請求権協定でその請求権に関する大韓民国の外交的保護権が放棄されただけである」と判示し、差戻し後の原審もこれにそのまま従った。
上告理由第 3 点に関する判断についての大法官キム・ソヨン、大法官イ・ドンウォン、大法官ノ・ジョンヒの個別意見
  • 請求権協定の解釈上、原告の損害賠償請求権は請求権協定の対象に含まれるというべきである。
  • ただし原告ら個人の請求権自体は請求権協定により当然に消滅するということはできず、請求権協定によりその請求権に関する大韓民国の外交的保護権のみが放棄されに過ぎない
  • したがって原告らは依然として大韓民国において被告に対して訴訟により権利を行使することができる。
大法官クォン・スニル、大法官チョ・ジェヨンの反対意見
  • 請求権協定の解釈上原告らの損害賠償請求権が請求権協定の対象に含まれるという立場をとったことについては見解を同じくする。
  • 請求権協定では大韓民国の外交的保護権のみが放棄されたとして、原告らが大韓民国において被告に対して訴訟によっての権利を行使することができると判断したことには同意できない。
  • 請求権協定第2条 1 は、「...両締約国及びその国民の間の請求権に関する問題
    が...完全かつ最終的に解決されたことになることを確認する。」と規定している。
  • これはすべての請求権に関する問題であることは明らかであり、第2条3にすべての請求権について「いかなる主張もできないものとする」と規定している以上、「完全かつ最終的に解決されたことになる」という文言の意味は、両締約国はもちろん、その国民ももはや請求権を行使することができなくなったという意味であると解さなければならない。
  • 請求権協定第2条に規定している「完全かつ最終的な解決」や「いかなる主張もできないこととする」という文言の意味は、個人請求権の完全な消滅まででなくとも「大韓民国国民が日本や日本国民に対して訴訟によって権利を行使することは制限される」という意味に解釈するのが妥当である。
  • 請求権協定により個人請求権をもはや行使できなくなることによって被害を受けた国民に、今からでも国家は正当な補償を行うべきである。大韓民国がこのような被害国民に対して負う責任は法的責任であり、これを単なる人道的・恩恵的措置とみることはできない。大韓民国は被害国民が訴訟を提起したか否かにかかわらず正当な補償がなされるようにする責務があり、このような被害国民に対して大韓民国が訴訟においてその消滅時効完成の有無
    を争うことはないと考える。
大法官キム・ジェヒョン、大法官キム・ソンスの多数意見に対する補充意見
  • 「強制動員慰謝料請求権」が請求権協定の対象に含まれていないという多数意見の立場は条約の解釈に関する一般原則に従うものであって妥当である。
  • 条約が国家ではなく個人の権利を一方的に放棄するような重大な不利益を与える場合には約定の意味を厳密に解釈しなければならず、その意味が明確でない場合には個人の権利を放棄していないものと解すべきである。
  • 国家とその所属国民が関与した反人道的な不法行為による損害賠償請求権、その中でも精神的損害に対する慰謝料請求権の消滅のような重大な効果を与えようとする場合には条約の意味をより厳密に解釈しなければならない。
  • 日本政府の韓半島に対する不法な植民支配と侵略戦争の遂行と直結した日本企業の反人道的な不法行為により動員され、人間としての尊厳と価値を尊重されないままあらゆる労働を強要された被害者である原告らは、精神的損害賠償を受けられずに依然として苦痛を受けている。大韓民国政府と日本政府が強制動員被害者たちの精神的苦痛を過度に軽視し、その実像を調査・確認しようとする努力すらしないまま請求権協定を締結した可能性もある。請求権協定で強制動員慰謝料請求権について明確に定めていない責任は協定を締結した当事者らが負担すべきであり、これを被害者らに転嫁してはならない。

ポイント

請求権協定は「財政的・民事的債権・債務関係を政治的合意によって解決するためのもの」であり、「精神的苦痛」を解決するものではないから慰謝料請求は妥当である。
ということのようです。
請求権協定の経緯や第2条1、第2条3についても「個人意見で反対を述べている」判事は述べていますが、判決には盛り込みませんでした。
「個人の権利を一方的に放棄するような重大な不利益を与える場合には約定の意味を厳密に解釈しなければならず、その意味が明確でない場合には個人の権利を放棄していないものと解すべき」という理屈は通じるものなんですかね…。
判決文を解説しているところがあまりないのでわからない部分が多いのですが、1969年成立のウィーン条約は事後法なので無視すべきというような解釈もありました。そういうことはこのウィーン条約を無視しないと成立しない理論ということにもなる気がします。
驚いたのは2人の判事が日本側の理論に立って個人意見を述べているところ。
普通はこう考えるとすんなりいきますが、政治的なことでこの判決を出さねばならなかった大審院はある意味お疲れさまでしたというべきですかね。

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